MSX2のVDP「V9938」はキャプテンシステムを念頭に開発 (1984年9月)

アスキーと日本楽器、画像処理LSI開発--キャプテン端末、割安に。

アスキーと日本楽器製造が共同でキャプテン(文字図形情報システム)端末機の主要部品となる画像処理用LSIを開発し、ビデオテックス(双方向文字図形情報システム)市場に進出する。このLSIはアスキーが設計、日本楽器が製造したもので、これを使うとキャプテンの端末機が十万円以下の安い価格で作れるようになるというのが最大のセールスポイント。

(中略)

テレビの画面を走査線に合わせて、最大512×424のコマに分割して処理する能力を持つ。

(中略)

現在、キャプテンの端末機には電子部品を組み合わせた画像処理回路が組み込まれている例が多いが、両社はこの電子回路をLSI技術を使って1チップ化した。このLSIを使えばキャプテン端末機の回路を簡単にでき、販売価格を大幅に引き下げることができるという。

【出典】日本経済新聞 1984年9月26日付

※日本楽器製造は後のヤマハ

 

「キャプテンシステム」は1984年11月30日にサービスを開始した、専用端末を電話回線に接続して利用する情報サービスである。翌1985年には電電公社が民営化され日本電信電話(NTT)となるが、電話から通信への時代の移り変わりを象徴するサービスと言えるものであった。

海外でも同様の仕組みのサービスは存在しており、総称してビデオテックスと呼ばれているが、成功例とされているのはフランスの「ミニテル」のみである。フランスは端末を無料で各家庭に配布していた。

さて、この記事にあるLSIとは、後にMSX2規格で採用されたVDP「V9938」のことと考えられる。キャプテンシステムの規格は解像度が248×204ドットであり、V9938はSCREEN5モードでそれをカバーする256×212ドット、SCREEN7モードでは縦横それぞれ倍の512×424ドットに対応していた。(インターレース使用時)

V9938ではスプライト機能も強化されていたが、MSX2規格のポイントとしてはゲームに向けた機能よりも、キャプテンシステムを始めとする日本語表示を視野に入れた強化だったと言える。ヤマハは翌1985年にMSX2対応の「キャプテンシステムアダプタ」を発表するなど、キャプテンシステムに対応した端末を開発している。

キャプテンシステムには音源に関する規格も存在しており、これは後にヤマハのFM音源チップおよび「MSX-AUDIO」規格として実を結ぶこととなる。

また、もうひとつのポイントが「1チップ化」である。複数のチップをひとつにまとめることでコスト削減をはかる、という思想は後に「MSX-SYSTEM」「MSX-ENGINE」という制御チップを生み出し、MSX本体の低価格化に貢献した。後年に登場した「1チップMSX」もこの思想の影響を少なからず受けたものである。

アスキーの西和彦氏はヤマハや東芝と半導体チップの開発に注力したが、ハードウェアにこだわる姿勢は後にビル・ゲイツとの対立を生み、マイクロソフトとの提携解消へとつながっていく。

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